ゴルフ由無し事 9
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59.ゴルフの真実
「懐疑こそが知性の貞操帯である。」という言葉があります。物事に疑問を抱くことが知性を守る(磨く)という意味のようです。哲学にも「絶対真」の存在に疑問を持つ哲学的懐疑論があります。
難しい哲学はともかく、我々の身近なことで、普遍的な真実(あるいは正しい事)はあるのでしょうか。一番それらしいのは数学ですが、それでも公理という「真実」を無条件に認めることで成り立っています。数学などの論理を重視するものと対極の関係にあるものが宗教で、自分が信じるもの以外は認めませんから、議論になりません。
政治体制も例外でなく、チャーチルがいったように「民主主義は最悪の政治だが、今までに存在したいかなる政治体制よりましだ」という(正しそうな)理由で先進国に採用されています。
理想的な政治体制は「神による独裁」ですが、人間は神になれません。絶対的な権力者は腐敗して、国民を不幸にすることが、歴史によって証明されています。しかし、民主主義が衆愚政治に陥ると、全体主義が台頭しやすくなります。民衆による革命を、経験していない民族の民主主義は、どこか危ういですね。
隣国の核実験に端を発した、わが国の防衛論議についても、似たようなところがあります。核兵器について論議することが、絶対ダメという意見は、核武装すべしという意見と同じくらい危険なことなのですが、この国は情緒的な意見を好む人が多く、ここでも何が正しいかをはっきりさせるのは難しいようです。(マスコミはそのような情緒指向の読者に迎合します。社会の木鐸としての役割を忘れないで欲しいものです)
その国の政治は、国民のレベルを反映します。若者が少しでも政治に関心を持つよう教宣することも、年配者の務めだろうと思います。
またまた、脱線しました。話を戻して、ゴルフの真実について考えます。
ベン・ホーガンの「モダンゴルフ」がさきがけとなって、現在のスイング理論が形成されたのは、約40年前のことです。
スイングに最も関係の深い、ゴルフクラブの進歩が、スイング理論に影響することは当然ですが、ヒッコリーがスティールシャフトに置き換わって以来、ゴルフクラブに劇的な進歩はありません。クラブの形状や構造に関するルールが、変更されない限り、当分の間、クラブに大きな変化はないと思われますから、現在のスイング理論はほぼ完成されていると考えて良さそうです。
それでは、流布されているスイング理論の中で、我々親睦ゴルファーにとっての「真実」は何かを検証しましょう。
まず、スイングに入る前の理論はおおむね正しいと考えていいです。
グリップ、アドレスについては、どんな解説書も同じような表現です。間違って覚えたグリップやアドレスを変えるのは、相当な覚悟と努力が必要です。何でも初めが肝心ですね。
アドレスを決める前の、儀式(プリショットルーチン)も重要です。これをスイング理論とは呼べないかも知れませんが、スイングの成否に大きな影響を与えますから、絶対に疎かにできません。正しいスイングは、正しいアドレスから、正しいアドレスは正しい儀式から生まれるのです。基本を踏まえて、自分なりの工夫をすることはいいのですが、基本を無視した我流は、百害あって一利なしです。
千利休が残した茶道の言葉に「守」「破」「離」というのがあります。
「守」は教えを守る、基本をマスターすること。
「破」は自分で工夫して、基本とは違ったことを試みること。
「離」は指導者の下から離れ、自分の考えを発展させることです。
道を究めることは難しく、我々は「守」をマスターすることすら、儘(まま)なりません。
次に、スイングの始動からテイクバックのトップまでの理屈も、信じて損はないことが多いです。この段階までは、大方のゴルファーにとって、ある程度の練習で、コントロールが可能ですから、頑張って習得することをお薦めします。
例えば、「テイクバックでシャフトが水平になった時に、クラブフェースは正面を向く」とか、「トップでは右脇が締まり、左手首は折れ曲がらず、ほぼフラットになる。」などは誰にでも当てはまります。
正しいアドレスをすることが、スイングの第一段階で、正しいトップを作ることが第二段階になります。そしてここまでは、理屈を理解すれば、誰でもプロと同じことができるのです。
しかし、次の第三段階では真実が「絵に描いた餅」になってしまいます。
ダウンスイング以降は、動きが早くなるため、大半の親睦ゴルファーにとって、例え理屈が正しくても、自分に出来ることが限られます。
「腰を切れ」「右手を返せ」「ビハインド・ザ・ボール」「タメを作れ」「ウエイトシフト」「左肘をたため」などなど、いくら言われても、ない袖は振れません。ダウンスイング以後の早い動きを、意識的に制御することは、相当に難しいですね。
第三段階の中心はインパクトですが、スイングは“正しくインパクトする”ことが目的ですから、第一段階も第二段階も、正しいインパクトを実現するための手段と考えることができます。
第二段階までは、なんとかクリアできても、理屈の通じない第三段階の壁に阻まれて、我々はスイングの迷路に入り込んでしまうのです。
ここでの解決策は、正しい練習をして、スイングの繰り返し精度を高めることしかありません。そして、第三段階をわかりやすく生徒さんに伝えられる人が、優秀なインストラクターだといえます。
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